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よ け ス ペ ー ス で す。

2009年2月15日(日)
<<ウナギイヌ?>>
13時から1時間半ほどの会議のために出勤。午前中に学科長からの「今日は 日曜ですから当然生協食堂は休みです。皆さん、飢え死にしないように水と 食料持参でご参集ください」とのメールが流れていた。冗談じゃない、そんな サバイバルゲームみたいな会議に誰が出てくるものかと思いながらも出勤した のは、学部執行部から会議をやれと言われている学科長が可哀想だったから。 一度でも学科長を経験すると、そういう気持ちになるもんなのよ。ま、出席し ても白目むいて只座ってるだけだけどね。会議の出席者は少なめ。昼夜逆転の 飲んだくれ生活で、よく大事な会議をサボる某先生も、予想通り今日はサボり。

会議の後、すぐに大学を発つ。京都駅前京阪ホテルのラウンジでしばし数 学。ブルバキの位相を読む。それからサンリオショップで新しいハローキティー グッズのチェックをしてから烏丸四条の大丸へ。少し買い物をしたり、バレン タインフェア最終日の残滓を拝んだりしてから、適当に夕食。帰宅後はまた少 しブルバキの位相を読む。フィルターとかウルトラフィルターって、学生時代 から名前ぐらいは知ってたけど、まさか勉強することになるとは思ってもいな かったな。それも、よりにもよってブルバキの位相のテキストで! まあ、フランス語の勉強になって、いいけどね。

プーランクといえば、このCDも持っていた。ポール・ メイエの長年の盟友エリック・ルサージュが中心になって、沢山のフランス人 演奏家との共演が収録されている2枚組CD。もともとは、ジャズで活躍し ているミッシェル・ポータルがクラシックのクラリネットを吹いてるCDを色々 捜してみて、結局これしか無かったから買った。当時はプーランクってどう よ?って感じだったけど。フランス語習ってフランスかぶれになってきた今は、 オーボエとファゴットのための三重奏など、昨日買っ たトリオ・オカザキのCDと聴き比べてができて、大変よろしい。

それにしても、このジャケットの昭和30年代的雰囲気は何なんでしょう? プーランクのモノクロ写真といい、時代がかった活字のスタイルといい、黄土色の 帯といい。思わずいすゞのヒルマンという乗用車を思い出してしまいます。 私の子供の頃は、よく こんな車 が走ってたんよ。今見ると、すごいですねー。半魚人みたいな顔した車ですねー。 おい、そこの半魚人!何を笑ってんだよ!? え?お前もしかしてウナギイヌか? 、、、みたいな。

ヒルマンは外国の車をいすゞ自動車がライセンス生産して売ってたようで、舗装 率が低くでこぼこ道だらけだった当時の日本では、車高が低いヒルマンはよく 「道路で腹をこすってしまう」と言われていた。元祖シャコタンですな。 当時1台70万円から92万円 してたというから、今でいえば1000〜2000万円ぐらいかしら。 かなりの高級車だったにちがいない。

2009年2月14日(土)
<<しみじみと噛みしめる>>
ドイツ語寺子屋塾の日。午前中に大慌てで予習をして昼過ぎに京大ルネへ。昨 日にひきつづき、書籍部で科研費で買いたい本を調査してから食堂で昼食。そ れから関西日仏学館の図書室に移動して、1時間ほどBoschの代数の本のドイ ツ語の部分を読んだりしでウオーミングアップ。15時過ぎから17時前まで 寺子屋。

私の通う上級クラスは私以外には、ゲーテ時代から旧知の30代とおぼしき 夫婦一組だけ。奥さんははきはきとした感じの颯爽とした方だが、ご主人は実 に物静かでひかえめなインテリ風(実際インテリなのだが)。私は彼のオジサン 臭もオジサン予備軍臭もしないところを好ましく思っているのだが、こういう人 がもし学科の同僚だったりして、嫌な仕事の押し付け会いをしたり気に入らない 意見を黙殺したりしあう間柄だったらどうだろうか?とつい考えてしまう。 そして語学学校のクラスメートとして、ほのぼのとした友人関係でいられた幸運 をしみじみと噛みしめるのである。

寺子屋の帰り道にJ EUGIA三条本店にたちより、先日から目をつけていたN響の茂木大輔(オー ボエ)と岡崎耕治(ファゴット)それから岡崎悦子(ピアノ)の3人からなる TRIO OKAZAKIのCDを購入。F.プーランクとJ.フランセのフランスものと、 モーツアルトのディヴェルティメント2曲と歌劇「魔笛」から2曲。この中で 私の一番のお気に入りはプーランクの三重奏。あーっ、何かよう分か らんけど、これってフランスね!って感じがして大変よろしい。それから最近は、ファ ゴットもいいなあと思うようになってきた。以前はファゴットの音を聴くと ムカムカしてきて、何をとぼけてやがるんだ!?って、いちいちキレてたけどね。

それにしても、このジャケットは凄いですねえ。DNAとジェットエンジ ンとステント挿入手術のために鉗子で止血されようとしている大動脈のトリオっ て、こんなんですかあ?って間抜けな突っ込みを入れたくなる、なかなか視覚的 に素敵な組合せだ。

夜は久しぶりにスポーツクラブ。

2009年2月13日(金)
<<未来形は難しい>>
午前中に少しフランス語動詞の単純未来形活用のおさらいをしてから、昼過ぎ に出勤。生協食堂で昼食の後、遠い遠い事務室の仮設ポストで郵便物をチェッ クしてから研究室へ。研究費の残高を調べたり、事務に問合せメールを出した りした後、13時半より大学院春期入試の面接。すぐに終って引き続き判定会 議と学科会議。14時半には終り、その後研究室ですこし雑用の後、京大へ。

京大ルネの書籍部で科研費の残りで買いたい本の品定めをしてから、関西 日仏学館の図書室へ。もういちど動詞の単純未来形活用のおさらい。それから ルネで夕食をとってから教室へ。未来形活用のテストは上出来とは言えないま でも、まずまず出来た。

会話練習は「占い師になった積もりでパートナーの未来について語って下 さい(単純未来形活用の練習)」という課題など。まあ、学生さん相手にやる 時は、「10年後の貴方はフランスの会社でバリバリ働いていて、沢山の給料 を稼いでいることでしょう。結婚は2回して、最初のフランス人の夫には愛想 をつかすでしょうが、2度目の結婚であなたは幸福になれるでしょう」みたい な事を言っておけばよろしい。

しかし、オジサン相手の時は何を言えばよいのか?"Dans dix ans? C'est tres simple. Je mourrai. C'est sur!" (10年後?簡単じゃよ。ワシは死 んでるな。確かに)みたいなリアルな事を言うから、それで会話練習が止まっ てしまう。ご婦人の場合もそれなりの年代の人だと厄介だけど、ままよとばか りに「今のご主人と別れて新しい人と結婚して幸福に暮らしていることでしょ う」といった激辛例文をひねり出して勝負に出ると、「えへへ、そうですかぁ。 でもお金持ちじゃないと嫌よ」みたいな事を言うから、まだましである。

一方、彼らからすると10年後の占いごっこで、私について「何かいいこ と」を言えと言われても、何を言えば良いか困るものらしい。先週は、"10 年後に死んでるはず"のオジサンが「貴方は10年後には学部長になってるで しょう」と言うので"C'est une tres mauvaise prediction! Parce que, dans ce cas il n'y aura pas le temps pour les recherches."(それは不吉な予言 ですね!なぜかって、もしそうなったら、研究時間が無くなってしまうじゃな いですか) と答えた。今日は別の人から「総長になってるでしょう」と言われ た。やめてください!先週よりも不吉さが格段に増しているじゃないですか、 と。本当は「10年後も相変わらず心静かにスパム論文を書いていることでし ょう」というのが最高に嬉しい予言なんだけどね。

明日からフランスに卒業旅行に出発し4月からは就職して他所の土地に行 きますという学生が、今日は最後だからとクラス全員の集合写真を撮った。授 業の最後に慌てて撮ったけれど、なかなか良い感じに撮れていた。後でメール で送ってくれるというので、楽しみだ。

講座が終って、今日も雨の中を京都市役所前まで歩く。酔狂にも百万遍経由 の遠回り。出町柳のコンビニで月桂冠200mlカップ酒を購入し、雨の夜 の路上飲酒。誰にも邪魔されず、酒の回りも早い。これってもうっ、癖になり そう。

2009年2月12日(木)
<<出鱈目言うなよな>>
午前中は山科区内で野暮用。昼過ぎに出勤し、生協で軽く昼食をとり、遠い遠 い事務の仮設ポストで郵便物を確認した後、13時半より17時ごろまで卒研 ゼミ(代数幾何学)。複素アフィン代数多様体の古典位相を議論するところで、 固有写像の話が出てきて二人で立ち往生。ゼミの後で図書館に行き、ブルバキ 数学原論の位相空間論をみてみたら結構色々書いてあった。なるほど位相空間 論の固有写像は代数幾何学の固有射と見かけは全然違うが、本質的に同じもの のようだ。これはちゃんと勉強しておこうか、と。

やはり学生と一緒にゼミをしていると、何かしら得るところがあって大変 よろしい。何といってもこれが学問の良いところだ。複雑系の皆さんと一緒に 会議をしていても、やはり何かしら得るところがあるけれど、それは「やっぱ り彼らの考えていることはようわからん」という割り切れなさとか、「この思 考の耐えられない空白は何なのよ!?」という焦燥感とか、そんなのばかりだ から、なかなか「大変よろしい」という具合にはいかない。

ブルバキの日本語版は「固有写像」を「適正写像」とか訳してあるので気 が削がれてしまい、明日は関西日仏学館の日だからということもあって、フラ ンス語版を借りて大学を発つ。

帰り道に大丸ラクト山科店に立ち寄り、バレンタインフェアで 神戸風月堂のガテット12B(生チョコブランデー9個、ラム9個)を購 入。店の人に聞いたら、ブランデー入りを「こちらはミルクチョコレートでご ざいます」、ラム入りを「そちらはカカオでございます」とか言ってた。おい おい、こちらが知らんと思って出鱈目言うなよな!まあ、いいけどさ。 あの店員、確か数日前に抹茶生チョコ買った時も、会計だけすませて商品を 渡さずに「ありがとうぎざいました!またよろしくおねがいします」ってにこ やかに一礼してるから、しばし目と目を見詰め合ってから、「あのう。商品 欲しいんですけど」って言ってやった人だな。

そういえば学生の頃、私はデパートでバイトしてて、客に出鱈目説明してたり、 包装をぐちゃぐちゃにやってたら、倉庫番に飛ばされたな。あーあ、あっち こっち受けた大学院入試は全部落とされるし、いくつか受けた公務員試験も教 員採用試験も、何もかも駄目で、デパートのバイトも包装紙で上手に包装でき るようにって毎晩練習してたりしたのに、結局まともに出来やしない。俺の人 生どうなっちまんだろうなーって思ってたら、倉庫番&在庫管理の仕事で思わ ぬ才能が開花し、天才倉庫番!の令名がデパートじゅうに轟きわたったものだ。 「二十歳過ぎれば只の人」って言うけど、今は全然駄目だけどね。輝かしい青 春の思い出が一杯詰まったその倉庫も、今は取り潰されてガレージになってい る。

帰宅したら、事務長から私の疎開生活の見通しについてのメールが届いて いた。夜はブルバキを少し読んだり、またまたすっかり忘れてしまってるフランス 語の動詞の活用のおさらいをしたりしてすごす。

2009年2月11日(水)
<<それ、旨いの?>>
午前中から夕方頃まで、自宅にて群論の講義ノート作成作業。夕方には一応 暫定第一版が完成したので、新聞社から貰った 只券を持って美術館「えき」KYOTOに ロベール・ドアノー写真展を見に行く。結構面白かった。というか、パリ の街の面白い一瞬を捉えるために、この人は何時間、あるいは何日間、待った り歩き回ったりしたんだろうなって、そういう事が少し気になった。私もしょっ ちゅう京都の街をウロウロきょろきょろしているけれど、面白い一瞬なんてそう そう出会えないものだしね。

それから、同じ伊勢丹の10階でバレンタインチョコの展示販売をやって たので、覗いてみた。さまざまな年齢層の女性客で溢れ返る中を、泳ぐようにし て、そして(この溢れ返る客が全てオジサン、またはオジサン予備軍だったら、どん なにおぞましいことだろう?)とか何とか考えながら、しばし偵察。日本や外国 の沢山のチョコレートがあって、1個7〜800円ぐらいするプラリーノなど も珍しくない。色々ひねくりまわして綺麗にしてあるのだけど、じゃあ、うま そうか?というと必ずしもそうでもない。色鉛筆みたいに彩色してあったり、 唐辛子だのピンクペッパー入りだのと、何だかよくわからないのもある。たま に旨そうなのがあって、いくつか試食してみたものの見掛け通りに旨いと も限らない。

結局何も買わずに山科に戻り、大丸ラクト山科店のバレンタインチョコ売 り場へ。ここは伊勢丹に比べて客もまばらで落ち着いた感じ。「菓子職人」の 抹茶トリュフがまだ残っているので、赤ワインだけ買って帰る。

夜は群論ノートの校正を少し。

2009年2月10日(火)
<<何だかとっても複雑系>>
10時前に出勤。入試採点も今日が最終日。既に別の採点部隊が半時間ぐらい 前に参集したせいか、昼食券は生協食堂の分しか無かった。採点は11時半頃 に終り、遠い遠い事務室の仮設郵便ポストを確認したりした後、昼食。今日は オジサンの大潮が押し寄せることも事務職員たちのコロニーが発生することも なく、私と「電池の先生」は、いつものように除去不可能な真性特異点として、 ひと気の無いいつもの「われわれの縄張り」で静かでゴキゲンな昼食 の時間をすごした。

「電池の先生」は私よりもご高齢なのにハンバーグとエビフライの洋食定 食。うーん、まだまだ育ち盛りなんでしょうか。私はカロリーをセーブしてチョ コレートに備えようと、鍋焼き饂飩定食。と、やや?!「電池の先生」が”おー い!お茶”のペットボトルを手に取ってぐびぐびと飲んだぞ!あれは真性特異 点としての威厳と尊厳を守るためのお守りだと思ってたんだけど、本当に飲む ことがあるんだ。うーむ、珍しいものを見てしまったな。今日は「いいこと」 がありそうだな。

13時から15時半頃まで学科会議。前半はあまりにも難しい議題なので、 いつの間にか気を失っていた。後半は何故か私が数日前にメーリングリストで 吠えた事、つまり「複雑系はどこまで複雑系でありうるか?」というすこぶる 哲学的なテーマが議題に上がっていた。複雑系自らが複雑系を議論すること自 体、何だかとっても複雑系だし、深入りしてはまた痛い目に会うので、適当に 相槌を打ったり茶々を入れたりしてやりすごす。そのやりとりの中でふと、3 月末までの我慢だとと思っていた、仮設郵便ポストをはじめとする私の疎開生 活が、事務体制の新制度の導入によってあと2年延長されるかもしれないとい う話を聞き、「何なのよ?それ」と俄然気色ばむ。それは聞き捨てならない。 まさかとは思うけど、事務体制の改善強化のための新制度が、事務体制の異常 事態を長期間放置する方向に運用されては本末転倒だし。

会議の後は、後期試験を休んだ学生の追試として、研究室で口頭試問を行 い、成績表に記入し、事務に届ける。それから図書館で最近出たモノグラフや レクチャーノートを2,3冊借り、生協食堂で夕食の後、そのまま帰宅。大丸 ラクト山科店の閉店時間に間に合ったので、去年のバレンタインセールの時に も買った 「菓子職人」の抹茶トリュフを購入。そうか、今日の「いいこと」は これだったのか、と。

帰宅後は、「私の疎開生活はいつまで続くのでしょうか?」と事務長に メールを出す。

2009年2月9日(月)
<<鴨川の中洲>>
9時半に出勤し、入試の採点。採点会場の入口では、空港のセキュリティー チェックよろしく厳密な入室チェックが行われた後、食券が手渡される。今日 は私の直前に並んだ若い男が、「デザート食べ放題&オジサンと相席」の豪華 レストラン食券の最後の一枚を取ったため、私は理性と欲望の戦いのために朝っ ぱらから無駄にエネルギーを消耗することなく、生協食堂の食券を取った。

昼食時の生協食堂は、何故か私の「縄張り」にまるで大潮がひたひたと押 し寄せるかのようにオジサン集団の前線が迫ってきていた。私の「縄張り」は 大食堂の一番端に近いところ。いつもは私と、そして少し離れたところでに通 称「電池の先生」がそれぞれ除去不可能な真性孤立特異点として、遠くのオジ サン集団の気配を背中に感じつつ静かにステーキ定食などを楽しんでいるので ある。「電池の先生」はいつも”おーいお茶”の小さい方のペットボトルをテー ブルに置いているが、彼がそれを飲んでいるところを見たことがない。もっと も私も自分の食事があるから、「電池の先生」ばかり監視しているわけでは ないけど。

しかし今日は様子が違っていて、オジサン集団が「わはは」が聞こえてき そうなぐらいに迫ってきていた。私は突然立ち上がって「電池の先生」の”おー いお茶”のペットボトルを奪い取り、手榴弾よろしく迫り来るオジサン集団め がけて投げつけたい衝動に駆られた。「おまえら!寄って来るな!!」と。

しかしそうこうしているうちに、オジサン集団に押し出されたのか、事務 の女性たちグループが私の「縄張り」のあちこちに、コロニーを作り始めた。 ああ、やられた!銃後の守りが甘かったのか。それにしてもこの増殖ぶりは何 なのだ?複雑系か?いずれにせよ、私の静かで平和な昼食時間はどうなってし まったのだ?と。

そういえばこのコロニーは鴨川に増殖する中州にも似ているな。私が学生 の頃は、まだ鴨川の中洲は無かったように思う。しかし、その後放っておいた らどんどん中州が出来、草ぼうぼうになり、川の流れが蛇行するようになった。 土木重機をつかって掘削除去してもすぐにまた出来てしまい、その原因等は 「複雑系だからわから」ず、管轄する京都市だかどこだかの行政担当者は頭を 抱えているそうだ。日々、複雑系に頭を抱える。鴨川で、生協食堂で、学科会 議で。貴方もそうでしたか。そうですか、私だけじゃないんですね、と以前新 聞でちょっと読んだだけの「行政担当者」に思いを寄せつつ、昼食を終える。

採点作業は午後の比較的早い時間に、「遅いことなら猫でもできる!お前ら、 さっさとやめちまえ!」と意味のよくわからない強制終了がかけられた。まだ エネルギー配分の勘所が掴めていない他学部の若い先生は、ようやくエンジン がかかってきたのだからもっと作業をやらせろ!と気色ばんでいたが、まあ、 採点作業の総責任者には彼らなりの考えがあってのことなのだろう。強制終了 は撤回されることなく、私は支給されたお八つを持って採点会場を後にし、遠 い遠い事務室の仮設郵便ポストで郵便物を確認し、顔だけで名前を知らない事 務職員から追試験の成績記入表を受け取り、ほとんどそのまま帰宅した。

夜はスポーツクラブへと思ったが、風邪の具合が微妙なので今日は自宅静 養で様子をみることにし、プーランクなどを聴きながら群論の講義ノート書き など。とりあえずシローの定理のところを書き終えた。あと可解群と5次以上 の対称群、交代群のところが残っているが、風邪薬の影響で頭がぼんやりする ので、今日も早めに切り上げる。

2009年2月8日(日)
<<大きな手>>
午前中に野暮用を片付け、午後は京都市内某所で開かれた私的なコンサートを 聴きに出掛ける。シューベルト、バルトーク、ブラームス、リスト、ショパン の素晴らしい演奏だった。背丈も普通ですらりとした体形の若い女性ピアニス トだったが、肩と上腕の筋肉がアスリートのそれで、手もびっくりするほど大 きかった。あの余裕のあるコントロールやメリハリの効いたタッチは、練習や 才能もさることながら、この恵まれた手の大きさとしっかりとした筋肉による ところも少なくないと思われる。

手が大きいといえば、10年ほど前に整形外科のお世話になって、リハビ リでしばらくの間、理学療養士のマッサージなどに通っていたことがある。そ こには20代の女性と30代の男性の2人の療養士がいたけれど、女性の方は 一見その辺の普通の若い娘のような背格好と華奢な体形ながら、手だけはぎょっ とする程大きかった。私は強い腕の力と握力でぐいぐい揉みほぐしてくれる男 性療養士のマッサージの方が好きで、その意味では女性療養士のマッサージは 少し物足りなかったけれど、彼女の指先の力はとても強く、これでほっぺたや 腕をつねられたらさぞかし痛いだろうなと思ったものである。

その後、医療保険制度が改訂されて全国的にリハビリ治療が経営的 に成り立たなくなり、整形外科に限らず脳梗塞の後遺症に苦しむ患者達が病院 から放り出され死の淵に追い込まれているとか、その中に世界的に有名な遺伝 学者なども含まれているといったことが報道されていた。私の通っていた病院 も、その後リハビリの物理療法部門が廃止されてしまったようだ。あの二人の 理学療養士が何処に行ってしまったかは知らない。

最近あちこちに出来ているお手軽リフレッシュ10分コースとか、首肩腰 30分コースとかのマッサージ店に、職を追われた理学療養士たちが大挙して 再就職しているのかしらと思ったけれど、先日行ってみたラクト山科の店の人 は、Exileとか安室奈美恵のことは沢山教えてくれたけれど、整形外科方 面のことは余り知らなさそうだったから、理学療養士上がりではなさそうだ。 ある日、コンサートを聴きにいったら、あの大きな手の(元)理学療養士の女性 がピアニストとして演奏していた、、、なんてことになれば愉快だけど、あり えない、か?

そういえば今日のピアニストは、ドイツに留学してドイツ語が分かるよう になるにつれて益々シューベルトの音楽が好きになってきたと言っていた。 ゲーテクラリネット奏者氏も、ドイツに住みドイツ語で話し考えていた頃は、 ドイツ音楽を演奏するときにイメージを纏めるのは容易だったけれど、日本に 帰ってきて時間が経つにつれ、それが難しくなってきたと言っていた。私とし ては、ふーん、そういうものなのかと言うしかないけれど、わかるような気 もする。ゲーテに通ってた頃は、フランス音楽に漂うあの独特の脱力系の雰囲 気が鼻についたけど、関西日仏学館に通い始めてからは割合すっと入っ ていけるようになり、プーランクを聴いてしみじみとした気分になったりして いる。

数学や理論計算機科学では、もしかして音楽以上に、ドイツ語に似つかわし い数学とかフランス語に似つかわしいプログラム言語理論というのがあるよう な気がする。計算機科学をやってた頃、スウエーデンの学者によるあるプログ ラム言語理論が注目され、世界中でよく研究されていたのだが、その結果フラ ンスの研究所のグループが作った新しい理論はえも言われぬフランスの香りが 漂っていて、ああ、これがフランスのエスプリというものなのかとしみじみと 感じ入ったものである。ドイツ人やオーストリア人は決してこういう理論は作 らないし、実際彼らはこの理論に見向きもしなかった。イギリス人もその理論 の素晴らしさは認めつつも、何となくしっくりこないような顔をしていた。

ただ、絵画はちょっと違っていて、言語よりも、街並みとか自然環境とか、 人々のファッションとか、暮らしぶりみたいな、言語とは違ったものと関係が 深いような気がするけどね。よく数学と音楽は深いところで繋がっていると言 われ、私もそうだろうなと思うけど、絵画と数学に何か関係はないかしらと 学生時代から何となく探り続けてきたものの、どうしても繋がらない。街 を彷徨って風景を眺めながら数学している積もりの私も、実は何にも考えずに ただ歩いているだけってことは多いし、何か考えている時は風景は目に 入らないしね。

風邪をひきかけているような気がするので、早めに寝る。

2009年2月7日(土)
<<嫌な奴>>
ドイツ語寺子屋塾の日。午前中は自宅で予習など。昼頃自宅を出て、京大ルネ で昼食後、関西日仏学館の図書館でBoschの代数の本を読んでウオーミングアッ プ。シローの定理の証明のところで、先日からどうもわからない部分があった のだが、今日は解決しってやろうと思って、半分居眠りしながら1時間ほど考 えたら何とかわかった。

15時過ぎから寺子屋。いつもの先生は、今日はドイツ人観光案内の仕事 であちこち案内して回っているので、先週見学に来ていた別の先生が代講。い つもの先生はオジサンで、代講の先生もオジサン。関西日仏の先生も前のクラ スも今度のクラスもオジサン予備軍。関西日仏学館の館長はオジサン。最近オ ジサンの先生ばかりである。しかし、まあ、何というか、こちらがお客さんで あるためか、オジサンでもオジサン予備軍でも特に不快感もなく、どちらかと いえば感じの良い人達であるところが不思議といえば不思議。しかし、 この「感じのいいオジサン」達も、同僚として嫌な仕事の押し付け合いを したり、気に入らない意見を黙殺し合ったりする関係になると、全然見え方が 違ってくるのかしら、などと思っていつも見ている。お互いの関係が少し変わ るだけで、悪魔に見えたり天使に見えたりするのではないか、と。

それはそうかもしれない。第一、教授会や学科会議で棺桶に入って死ぬ練習 をしたり、騒音の中で勉強に集中する特別トレーニングに励んだり、椅子に座 って何時間白目をむいていられるかの最長記録に挑戦したり、何故か猛獣のよ うに吠えてみたりしているオジサン達が、私が日々ここで書き連ねているよう に、本当に「世にもおぞましき存在の臭気を放ち、日々この世に害毒を撒き散 らしている、可及的速やかに駆除すべきつ絶滅推奨種」ならば、サービス業と しての大学運営などとうの昔に成り立っていないはずである。

しかるに自分の利益を守るために5分間に2回以上の頻度でいくらでも平 気で嘘がつける虚言癖の妖怪も、再三の丁重なる問合せに対しても秘書を介し て木で鼻をくくったような答えにもなっていない返答しかよこさない倣岸無礼 の輩も、出鱈目にちゃぶ台をひっくり返して何もかも滅茶苦茶にしてしまう ビョーキが治らない頓珍漢野郎も、恫喝政治で権力の座を目指すインテリヤクザ も、別に電車の中で鼻毛を抜いたり鼻糞をほじくって食べたりするわけでも Sbuxで30秒に1度の頻度で無限にチッチ音を発生させるわけでもなく、 おそらくは「感じのいいオジサン」として(?) 皆学生達に慕われて立派に先生をやっているようだ。

かく言う私も、彼らと違って学生にこそ慕われてはいないが、語学学校の クラスメートや学校時代の同窓生・会社員時代からの友人達の前、あるいは、 その辺の路上を徘徊しているときなどは、「ちょっと変わってるけど、要する にタダの気のいいその辺のオジサン」って感じだと思う。その一方で、大学の 同僚たちの前では、時と場合によっては「根性が完璧にひん曲がったかなり嫌 な奴」となる。

まあ、それは大学に限らず、色々な職場、学会、町内会等、利害関係がある ところではどんなオジサンでももそういう風になるというのが、私の経験則 である。まるで、自分の中のありとあらゆる邪悪な心、根性の悪さを生 活廃棄物として全て分別回収してポリ袋に詰め、ゴミの集配日よろしく出勤日 に大学に捨てに行っているような感じだ。だからこそ、語学学校の「感じのい いオジサン」達に対しても、油断してはならないし、絶滅推奨種認定を安易に 取り消すべきではないのではないかと考えてしまうのだ。

夜は群論の講義ノート作りをほんの少し。

2009年2月6日(金)
<<竹茂楼>>
今日は再び9時過ぎ出勤で入試の採点。今日は理性が圧勝して、迷いなく生協 食堂の食券を選び、昨日と同じくオジサンの臭気の届かない柱の陰の一番端っ この席で心静かにステーキ定食の昼食をとった。採点は今日も午後の比較的早 い時間帯に終り、この週末も採点作業は無し。次の作業は月曜日だという。受 験生が減ったことと、この10年ぐらいで理工系の教員がかなり増えたことが 相まってか、最近は入試の採点もずいぶん楽になった。

採点作業から解放された後、遠い遠い仮設郵便ポストに郵便物をチェック しに行ったら、親和会宴会の申し込み書が入っていた。今年は美濃吉の竹茂楼 だという。私は、目出度いことがあるとプライベートでは普段滅多に行かない 料亭に行く。最近では数年前に山科のわらびの里に行った。その前は、会社員 から大学教員に転職できた十数年前に竹茂楼に行った。竹茂楼はそれ以来だ。 今回は別に何も目出度いことなど無いし、職場の宴会だから周りのオジサン達 が邪魔だけど、毎月強制徴収されている積み立て金もあることだし、今後目出 度いことを待ってたら人生が終ってしまうかもしれないし、この機会にぜひも う一度行っておこうか、と。

そこで忘れないうちに申し込んでおこうとしたら、遠い遠い事務の係の 人は、高山先生が申し込み一番乗りなのでまだ集金用の箱も作っておらず、今 のところお釣りがない。お釣りは後で数物事務室経由で届けてもらうように手 配しましょうか?と。そんな手配ができるものなら、やってみるがよい。 そんな普通の事が普通に出来る状態なら誰も苦労はしませんがな。まあ、事務 の末端の人は詳しい事情を知らないのだろう。当事者である私でさえ、一体何 が起こっていて何でこんな目に会わねばならぬのかよく分かってないし。

それで「それ(数物事務経由のこと)は難しいと思いますよ」とだけ言って 生協に行き、そういえば最近切らしていたマーカーペンを一本買って一万円札を 崩し、再び遠い遠い事務に戻って申し込みを済ませる。

それから関西日仏学館へ。生協ルネで簡単に夕食を済ませ、19時前から 授業。単純未来形動詞の活用形のテストは、どうやら我々を勉強に追い立てる ためのフェイントだったらしく、「来週に延期」だと。教室には「早くテスト してくれなきゃ、忘れてしまう!」という怒号の嵐が吹き荒れていたが、先生 は、一旦忘れて、また覚えると記憶が定着するから、その方が良いのだという 独自の記憶理論を力説していた。私はこの一週間、忘れたり覚えたりを何度も 繰り返してみましたけど、何が良くなったのかよくわかりませんけど?

帰りは久々に菊水路上飲酒。別に関西日仏学館で異常に興奮したわけでも ないけど、昨日、今日と入試の採点、フランス語単純未来動詞の暗記、そして 昨日の夜のメールのやりとりで迂闊にも久々に複雑系の皆様の思考の闇に触 れてしまったこともあって、気分直しにちょっと一杯ひっかけようか、と。 思考の闇はいくら突付いても思考の闇なのだから相手にしてはいかんと、 学科長時代に学んだはず教訓を一旦忘れて、また覚えることになったわけだが、 果たしてこの記憶は定着するかしら。

2009年2月5日(木)
<<すぐに忘れる>>
今日は少し遅めの9時半過ぎ出勤で入試の採点。昼食券は生協食堂の方を選ぶ。 理性と欲望の壮絶な戦いに、昨日の記憶がまだ生々しい「オジサンとの相席の 恐怖」が加担して、見事理性が勝利したというわけだ。昼食はオジサンの臭気 が届かない柱の陰の席を陣取り、鍋焼き饂飩セット。午後の作業は案外早く終 り、すぐに大学を発つ。大丸ラクト山科店でバレンタインチョコをすこし偵察 し、15時半頃に帰宅。

それから群論のノート作り、というわけにはいかず、今日はフランス語基 本動詞の活用形の暗記。覚えても覚えても、覚える側からボロボロ忘れ、忘れ てはまた覚える。まるでモグラ叩きだ。大学入試の世界史もそうだった。入試 の前日まで山川の世界史辞典を相手に一晩中モグラ叩きに興じたが、世界史で なんとか足を引っ張られないようにするのが精一杯だった。

そのくせ、お前は30年前にオレにこんな事言っただろう、というような ことは執念深く覚えてたりする。大事な事は覚えられず、どうでも良いことば かり覚えている。どうでも良い記憶の集積が、私の脳を年々歪めてゆくのであ る。

途中、複雑系の皆さんが複雑なメールを流していたので、それはいくらな んでも複雑系がすぎるんじゃあないですかと噛み付いたりしているうちに、ず いぶん時間を無駄にする。学科長時代に学んだ「複雑系には深入りするな!」 という教訓を、もう忘れたのか?

2009年2月4日(水)
<<わはは>>
昨日よりも早起きして9時過ぎに出勤し、学内某所に監禁されて入試の採点。 辛い採点期間の唯一の楽しみは、昼食とお八つが支給されること。これは、カ ロリーと糖分が不足しては脳の働きを低下させ、採点の質に影響を与えかねな いという配慮によるものと思われる。確かに教員の中には酒浸りの昼夜逆転生 活を送るなどして、食生活などが不規則な人もいるから、監禁生活の中で昼食 時間を設け、無理矢理何かを食べさせるのは、学習効果を高めるために欠食児 童に給食を行うようなものかもしれない。しかしそれ以外に、食べ物で釣って おいて採点担当者の士気を高めるという意味もあるらしく、一宿一飯の恩義を 忘れぬ義理堅き私(それは嘘だけど)などは、まさにそれにどんぴしゃに当ては まっている。つまり、飴と鞭というやつである。

支給される昼食券は、生協食堂の採点担当者用特別メニューか、あるいは、 普段は滅多に入ることのない外部業者のレストランのランチの2種類から選べ ることが多い。前者もメニューのバラエティーが多くてなかなか良いのだけど、 私にとって後者は、特にデザートのバイキングが魅惑的。その一方でせいぜい 4人掛けの小さなテーブルでオジサンたちと相席になるのが壊滅的欠点である。 広い生協食堂ならオジサンの居ない場所を探して心静かに昼食をとることがで きる。2種類の昼食券からどちらか一方を選べと言われた場合、デザートバイ キングの魅力に賭けるべきか、それともオジサン集団による壊滅的打撃を避け るべきか。これは大変難しい問題なのである。

今日もその難しい選択を迫られたが、欲望に負けて外部業者のレストラン の食券を選んでしまった。相席で座ったテーブルの手前の男は、メインディッ シュとスープとサラダは勿論のこと、パンのお代わりを繰り返し、フルーツポ ンチ、デザートのケーキ2種類とムース風のデザート2種を平らげていた。 むしゃむしゃむしゃむしゃよく食べる奴だな、健康診断で引っかからないのか しらと思って見ていたが、食べ終わったらさっさと出ていった。隣の男は私が 来る前から居たが、私が帰る頃にもまだもぐもぐやっていた。まあ、好きにす るがいいさ。

窓際の眺めの良いテーブルは先に来てたオジサン集団が占拠してて、連 中は食べ終わった後も、コーヒーなどをすすりながらいつまでもお喋りに 興じている。そうやってして昼休みの間目一杯つまらぬお喋りをして、わはは と笑ってすごすのが彼らの流儀である。私が食べ終わって帰る頃にも、まだわ ははとやっていた。

てやんでえ!何が、「わはは」だ。そういえば、昔、「トムとジェリー」 が輸入されるよりも前に、「ドラ猫大将」というアメリカアニメをやっていて、 ♪わはは、おいらは陽気だ、わはは。銭は無いけど、イカしてすましてお出か けっだーい!野良猫、チビ猫ついておいで♪という歌は良く歌った。 底抜けに楽天的な楽しい歌で、ドラ猫大将のキャラクターにぴったり。 今でも、密室で酒飲んで密かに踊る時のレパートリーのひとつだ。 ドラ猫大将の絵が入った弁当箱もお気に入りだったな。あれ、まだ実家に あるかも知れない。 ま、そんなことはどうでもい いや。

今日の分の採点は午後の割合早い時間帯に終ったので、遠い遠い事務室の 郵便ポストで郵便物をチェックし、研究室に戻って少し雑用を片付けた後、さっ さと帰宅。途中大丸ラクト山科店に立ち寄ったら、一夜にしてバレンタインチョ コの売り場が拡充されていて、気合い十分の様相を呈していた。よろしい。こ れで京都店まで遠征しなくてもよくなったぞ。帰宅後は群論の講義ノート作り。

2009年2月3日(火)
<<関西嫌い?>>
久しぶりに早起きして10時過ぎに出勤。遠い遠い事務室の仮設郵便ポストで 郵便物を受け取り、研究室で一息おいて10時半より1時間ほど、私も副査を 勤める博士論文の公聴会。その後、学位審議委員会。12時過ぎに終了。生協 食堂で昼食の後、東京のコンサートホールに電話を掛けて、チケットの予約。 それからすぐに大学を発ち、山科駅前のコンビニからチケットの代金を送金。

午後の早い時間に帰宅して、それからは群論の講義ノート作り。今日はシ ローの定理の部分を書き始める。大丸京都店に乗り込んでチョコレート三昧 するのは、明日からの入試採点が終ってからの11日頃で十分か、と。

講義ノート作りの手を休め、途中インターネットで2月下旬の出張のホテ ルを予約する。出張分のホテルは取れたけれど、出張のついでにポール・メイ エのコンサートを聴きに行くために私費で泊まる翌日のホテルがなかなか見つ からず。大学入試の関係で受験生が押さえているのだろう。去年も似たような ことがあって、定宿にしている新宿のホテルが一杯で苦労した。

よく、ほとんど寝泊りするだけのホテルなら安ければ安いほど良いという 人がいるけれど、私は結構ホテルの雰囲気にうるさい方である。設備備品があ まりにも安っぽいところだと、気分が滅入ってしまって逃げ出したくなる。実 際、逃げ出したこともあった。

数年前、数日間の学会の出張で都内にしては格安のホテルに予約したのだが、行っ てみるとバーやキャバレーの密集する地域にあって、終電に乗り遅れた酔客が 前後不覚に倒れ込み往復鼾で爆睡するための、駱駝色の薄い毛布一枚の小さな ベッドがある以外ほとんど足の踏み場所も荷物の置き場所もないような狭い部屋 だった。

やれやれ、えらい所に来てしまったな。しかしまあ、日誌のネタにできるか らよしとしようかと思いつつ、数日分の着替えや本やらノートやらが詰まった、 この部屋ではそこ以外に行き場の無い大きな旅行鞄と一緒にベットに横たわり、 ふと見上げると、壁からせり出した棚に置かれた小さなテレビがちょうど枕元の 上方にある。棚が落ちたら顔面直撃間違いなし。横を見ると、置き場所の無い電 話機が壁に張り付けられている。寝返りを打ったら受話器が転げ落ちてきそうだ。

ユニットバスは便器から洗面台からバスタブから、ありとあらゆるものが見事に 高密度実装されており、朝の支度などはよほど目をしっかり覚まして注意深く立 ち回らないと、歯ブラシからタオルから髭剃りから、何から何まで便器の中に落 としてしまいそうである。大学と駅を結ぶ近江バスの中で笠山という所を 経由するバスは、車体から座椅子から何からなにまでもが通常の6割ぐらいの大 きさに縮小されている不思議な車両が使われていて、私はそれを「小人の国のバス」と呼んで いるが、それを彷彿とさせるユニットバスだった。

日焼けしたビニール製の薄っぺらいカーテンを払いのけ、小学校の校舎を思い 出す銀色に光るアルミサッシの窓を開ければ、バーやキャバレーの店の裏側の雑然 とした光景が飛び込んでくる。

あーっ、もう嫌だ!私はチェックインした当日に、近所を偵察し、宿泊代が倍はするだろう近くの別ホテルを見つけてその場で予 約し、元のホテルには一泊もせずにキャンセルして飛び出したのだった。ただ、 そういうホテルでも、フロントの人はとても親切だったけど。

さて、ポール・メイエは毎年のように日本にやってきて、全国の主要都市 でコンサートを開くのだけど、どうもポール・メイエ自身かポール・メイエの 日本での興行を請け負っている日本側のエージェントが関西嫌いらしく、京阪 神地区には決してやってこない。ゲーテ・クラリネット奏者氏は数年前、意を 決して横浜まで日帰り強行軍で聴きに行ったそうだ。

東京では沢山のクラシックコンサートが開かれる。私も日曜日の夜や月曜 日の夜のコンサートなら、日大の定期セミナーの前日や帰りに立ち寄れるのだ が、そもそも日曜や月曜の夜にはあまりコンサートは開かれない。楽しい週末 も終り、さあ明日から仕事だという日曜の夜や、さあ新しい週が始まった。火 曜も水曜も木曜も金曜も仕事だという月曜の夜に、のんびりコンサートに出か ける気分になれる人はそう多くはないはずで、その辺のところを主催者側も考 えているのだろう。コンサートは週の後半か、土日の午後に開かれることが多 いのだ。だから、折角東京に出張しても、コンビニで買った焼酎などをチビチ ビやりながら、ホテルのテレビで何故か自宅では決して見ないN響アワーを見 て、こっそり幸福感に浸るが関の山なのだ。ところが、今度の日大セミナーが 例外的に火曜日に行われるということで、ポール・メイエのコンサートにどん ぴしゃでぶつかってしまったというわけ。

2009年2月2日(月)
<<ゴディバの上用饅頭>>
夕方スポーツクラブに行った以外は、自宅で群論の講義ノート作り。有限生成 アーベル群の基本定理の部分は何とか完成した。中国人剰余定理の整数版の証 明やユークリッドの互除法定理まで書いているのでLaTeX版のA4サイズで30 ページを越えてしまった。これだけ書いておけば、講義はさらっと流して「あ とはレジュメを読んでおきなさい」で済ませるかも。

ってな調子でやっていたので、大丸京都店などには行かず。山科店のバレ ンタインチョコの売り場をみてみたら、1個300〜400円ぐらいするプラ リーネが売ってて、何事かと思ったらゴディバとかいうベルギーの会社の製品 らしい。うーん、いつも私がラクト山科の和菓子屋で買っている饅頭が1個1 50〜180円だけど、1個300円以上というのは普段は滅多に手を出さな い紅白上用饅頭に匹敵する値段だ。うーむ、どうしようかな。しかし、生チョ コをつまみに赤ワインという組合せを夢見る私としては、生チョコ系を狙いた いところ。抹茶入り生チョコってのも悪くない。抹茶入りだと、やはり京都の 会社のものを捜すことになろう。そういえば去年は菓子職人って会社のトリュ フ型抹茶生チョコを買ったな。やっぱり山科にとどまっていては駄目で、一 度大丸か高島屋の京都店に繰り出さねば。

夜はフランス語の勉強をすこし。

2009年2月1日(日)
<<バレンタインセール>>
昼頃と夕方にラクト山科やマツヤスーパー&ニックに買い物に出た以外は、終 日自宅で群論の講義ノート作成作業。有限生成アーベル群の構造定理のところ でまだ梃子摺っている。証明は矢鱈と長い上に、証明で使う色々な概念の説明 も真面目にやっていると大変なことになるし、かと言って真面目にやらないと 禄なことにはならない。そもそもこんな長い話を講義で聞いて理解できる学生 が居るとも思えないし、苦労して証明を勉強させても、そのアイディアが他に 応用できるのかどうかはよくわからない。表現論などでは使ってるのかしら。 しかし、有限生成アーベル群のところは、まる3日ぐらいあれば片付きそうだ けど。それからシローの定理、それから少し前に戻って5次以上の対称 群の可解性と交代群の単純性、および、代数方程式の可解性との関連、さらに 有限群の分類の話が残っている。2月中に片付くかな。

そういえば去年の大丸ラクト山科店のバレンタインセールは気合いが入っ ていて、どこかの有名なお菓子屋さんの特設コーナーができて、うまそうなチョ コレートを沢山売っていた。群がる女性たちを掻き分けて、私も夢中でチョコ 選びをしていたものである。今年は少し様子が違っていて、何だか地味な感じ がする。ギフト解体品セールも山科店はいまひとつだし、もうちょっとやる気 出してもらわんとあきまへんな。やはり四条河原町や烏丸四条あたりに繰り出 さないと駄目かもしれない。