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よ け ス ペ ー ス で す。

2009年7月31日(金)
<<カルチャー・ショック>>
あっという間に金曜日がやってきた。またフランス語基本動詞の活用形の復習。 覚えては忘れ、忘れては覚え。切りがない。山科駅前Sbuxで少し早めの昼食の 後、出勤。OCR用紙に成績表を転記し、採点講評を書き、答案とともに事務に 提出。これで前期試験関係は全て終了。 ついでに生協で文房具を購入。それから研究室に戻って、フランス語の 宿題を片付けてから、大学を発つ。17時半頃に関西日仏学館に着き、図書館 で授業の予習など。隣の京大ルネで夕食のあと、フランス語の授業。

今日は日仏の礼儀作法の違いを比較しましょうというテーマ。 私が発表した例文は、

Au Japon il est normal que des auditeurs s'assoupissent devant des conférenciers quand la conférence est ennyeuse. Mais en france il est incroyable que des gens l'admettent ça. C'est presque une provocation. (日本では、話が退屈なとき、講演者の目の前でも平気で居眠りをする。しかし、 こんな事が許されるなんて、フランスでは考えられないことである。それはほ とんど(講演者に対する)挑発行為(とも言えるほど失礼な態度)だ。)

研究発表などで国際会議によく出席する大学教授の間でも、西洋文化の中 で居眠りがいかに犯罪的とされているかは、あまり知られていない。このネタ はきっと先生にウケるだろうと思ってたら、案の定、O先生は我が意を得たり といった反応を示していた。日本の大学で教える西洋人の語学教師は皆、学生 が授業中に平気で居眠りするのに大変なカルチャー・ショックを受ける。こん な侮辱的で挑発的な行為をされるのは生まれて初めてだ、と。まあ、これは文 化の違いだからしょうがない。私だって、サービス業や顧客対応部門で働く全 てのドイツ人に、「『でも、それは私のせいじゃない』みたいな事を口癖のよう に言うのはやめろ!」と叫んで、しばき回してやりたいと常々思っているし。

さて、異文化交流に思いを馳せた今日の1枚は、ロストロポーヴィチの「アル ペジオーネ・ソナタ」(シューベルト)、「民謡風の5つの小品」(R.シュー マン)、「チェロ・ソナタ」(ドビュッシー)。

このジャケットも、いいような悪いような、である。まあ、歴史的名演シ リーズって感じは良く出てるけど。左上の"Legends 1968" のスタンプみたい なのは、ちょっと雰囲気モノで面白い。

そういえば、昨日紹介したカルマン・ ベルケスCDのジャケットの絵は、皆既日食を描いたものだそうだ。 うーむ。何でわざわ ざ日食の絵を描くかね。しかもそれをウエーバーのCDに使う意味がよくわから ん。まさか、ウエーバーが皆既日食に感動して「グランデュオ」を作曲した、な んてこともないだろうし。

関西在住の高校OBのメーリングリストは、相変わらずチャット状態。しかし、 西洋映画、クラシック音楽、語学、美術、外国文化のいずれの話題にも何の 興味も示さない人達なので、ちょっと取り付く島が無いなあって感じ。 これらの反応を見て、それ以外のネタも適宜繰り出そうかと目論んでいたけ ど、もういいやって気分になってきた。 まあ、刺激的なお喋りの相手って、そんなに簡単に見つかるもんじゃないから、 しょうがないんだけど。

明日は三重の実家で所用と鰻三昧で一泊の予定。次回更新は明後日の深夜 以降の予定。

2009年7月30日(木)
<<ぴったり8割>>
今日は例の一時金訴訟の裁判のある日だが、多忙のためパス。昼頃に出勤し研 究室こそこそ昼食の後、事務で前期試験の答案を受け取り、採点開始。途中1 4時から15時半頃まで、学生の要望で行った卒研ゼミA(可換環論・代数幾 何学)のおまけゼミ。その後、また採点作業。ほぼ終了しかけたところで帰宅 時間。夕食後、予約しておいた歯科医へ定期診療。帰宅後、採点作業を終了さ せ、集計作業へ。あとは成績表に転記して事務に提出するだけとなる。色々や ることがあるので、採点作業が今日一日終ったのは幸いだ。

私の場合、どんな科目でも大体8割以上合格者を出すぐらいが妥当だと思っ て講義内容・出題方針・採点基準を決めている。今回は初めて担当する科目な ので、どうなることやらと思っていたが、ぴったり8割の合格者が出た。

さて、ぴったり8割の今日の1枚は、カルマン・ベルケスという人のクラリネッ トで、ウェーバーのクラリネット曲集。昨日紹介したフックスのCDの「グラン デュオ」も入っている。実はこのCDで「グランデュオ」の予習をして、さらに フックスのCDもと考えていたところで、ゲーテ・クラリネット奏者氏から「予 習はやめなさい!」とストップがかかったのだった。

それにしても、やっぱりウェーバーはいいよね。ひねくれて屈折し切った 人格のひだを、ひとつひとつ引き伸ばして、明るい気分にしてくれる。 心のエステね。

しかし、このジャケットの絵は何なんでしょう。太陽が消滅する直前 の地球最後の日ですか?水彩画の写生をしていたら、突然風が吹いてきて画用 紙が吹き飛ばされ、近くのドブに落ちてしまった。慌てて拾い上げても時既に 遅しで、絵の具が流れて絵がこんな風になってしまった、と。子供の頃、一度 ぐらいはこういう事を経験したような気がする。

採点作業が終ってのんびりしていたところ、ドイツのマックス・プランク研究 所からメールが届く。1ヶ月ぐらい前に出した2通の問合せメールに全然応答 がないので、何となくマックス・プランクがドイツ・テレコムのイメージと重 なってしまって激しく気がそげ、それ故に、ここしばらくドイツ逃亡作戦を真 面目に考える気になれなかったのだが、明日から少し再開してみようかと思う。

2009年7月29日(水)
<<遠くを見詰める目>>
研究日。午前中は自宅で色々野暮用。午後は京大へ。数学教室の図書室に籠る。 夜はフランス語の宿題をやったり、少し数学を考えたり。京大の帰りは久しぶ りにJEUGIA 三条本店を偵察。私を待ってましたとばかりに、本命CDが入荷し ており、迷わず購入。その後、すこし楽器売り場などを見て回る。サンリオが ハロー・キティー検定を始めることになり、検定本を今日から発売したとの情 報を入手したので、いくつかの書店を見て回ったが、まだ売ってなかった。こ ういうことって、京都は大体1、2日後れるのよね。

さて、JEUGIA三条本店で私を待っていた今日の1枚は、ヴェンツェン・フック スのクラリネット、野平一郎のピアノ伴奏で、ブラームスのクラリネット・ソ ナタの第一番と、シューマンの幻想小品集作品73、ウェーバーの「グランデュ オ」、つまり協奏的大二重奏曲、プーランクのクラリネット・ソナタ。

以前、フックスのコンサートを聴きに行ったのだが、ピアノ伴奏者との相 性が悪く、というか、今となってはピアノ伴奏者が全面的に悪かったのだと思っ ているのだが、その日の演奏は散々な出来だった。フックス自身も苛立ってい るのがよく分かった。彼の演奏を聴いたのは初めてだったので、この人はこの 程度なのかと思ったら、ゲーテ・クラリネット奏者氏が「断じてそうではない!」 と息巻き、このCDのことを教えてくれたのである。

それじゃあと、このCDを捜して聴いてみよう思ったら、「私が近く自分の コンサートでグランデュオをやる積もりだし、それまではフックスのCDは聴い ては駄目!」と言う。フックスのCDを聴いたりして事前に「勉強」はする な。先入観の無い「素直な心で私の演奏を聴け」というのである。まあ、そ うまで言われたら聴くわけにもいかないし、もともと店頭にはあまり売って ないCDだから、まあいいかと思って買わずにいた。勿論、期待通り、氏のコン サートの演奏は素晴らしい出来だったけど、それやこれやで長らくこのCDの ことを忘れていたのである。

このジャケット、顔半分が影になっている野平一郎の写真が、全てをオカ ルト・ワールドに陥れてしまっている。もうちょっと別の写真は無かったのか しら。その点を反省してか、私が今日買ったCDでは野平氏の写真は削除され、 このフックスの肖像が中央にきて、すっきりと結構いい感じに仕上がっている。

それにしても、あの、エルンスト・オッデンザマーと「クラリネット真剣白 羽取り」の荒業で暗闇の死闘を繰り広げた(?)(7月12日の日誌参照)フックス が、遠くを見詰める目をして何を思ってるのかしら?と考えると、色々ロクで もない想像を掻きたてられて、楽しい。

2009年7月28日(火)
<<油断も隙もならない>>
午前中は何となく数学。昨日の日大セミナーで聞いたコメントに関連して色々 な疑問が湧いてくるので、それをノートに整理して、さてこれをどう解決した ものかと溜息。そうこうしているうちに出勤時間。今日は雨模様だしJR西日本 は一旦遅れ出したら30分ぐらいは平気で遅れるので、用心して早めに自宅を 出る。

JR山科駅で電車の遅れが無いことを確認して、山科駅前Sbuxで昼食。Sbux の窓越しに何となく外を眺めていたら、以前教えたことのある学生が山科駅の 改札に向かうのが見えた。この学生とは1ヶ月程前に三条通りのクリーニング 取次店前でもすれ違い、ああ、山科は俺の縄張りだと思って油断してたのに、 これじゃあおちおち道を歩きながら鼻糞をほじくって食べてみたり鼻毛を抜い たりできないなと、嘆き悲しんだのであった。

14時頃に出勤。しばし雑用の後、15時から16時まで2回生の代数学 の前期試験監督。試験の後、16時半より17時45分頃まで教授会。その後、 チャーターバスで石山の某ホテルに移動し、親和会宴会。くじで決まった一番 端の席で、隣の電気の先生たちの話を適当に聞き流しつつ、ひとり酒と料理を 楽しんでいたのだが、終盤に入って執行部の某先生が酒を注ぎに来て話し掛け てきた。高山先生は数理科学科の中でも特に変わった先生だと聞いて興味を持 ったので、ちょっとお話がしたくなった、と。

ほう、絶滅稀少貴種の見学に来られたというわけですか?私のみるところ、 数学者の中には偏向した人間は沢山居るが、私のように極端に屈折した人間は いない。数学は人格的にどこかあっけんからんとしたものを要求する学問で、 変に屈折しているととてもやりづらく、比較的早い段階で潰れるか淘汰される と思う。実際私は早い段階で淘汰されたのだが、その時期が早すぎたので、何 かのハズミで奇跡的に復活したのだ。しかし、屈折は以前にも増して激しくな っている。この世界で潰れずに居座っているのは、ひとえにオジサン特有の フテブテシサのお陰であり、この件については、オジサンになれてよかったと 思う。

しかし、何処の何方が存じ上げぬ50を過ぎたオッサンが、「特に変わった 先生だと聞いて興味を持った」みたいな理由で、私のような日々気配を殺して 生きている透明人間モードのオッサンと「お話がしたくなる」のは、よく よく何か裏の意図があるに決まっている。これは怪しいと思い、用心して テキトーな返事をしておく。それでも後で考えると、ああ、あんな余計な事 は言わずにこう言って誤魔化しておけばよかったなとか、色々後悔すること もあって、後味悪し。全く親和会宴会も油断も隙もならなくなってきたな。

さて、油断も隙もない親和会宴会の後の1枚は、アレッサンドロ・カルボナー レの「クラリネット吹きのオペラ」。ロッシーニなどのオペラ曲をたっぷり楽 しめる。以前カルボナーレのコンサートを神戸まで聴きに行ったことがあるけ ど、期待通りの素晴らしい演奏だった。その時の伴奏をしてたのが、6月12 日に紹介した黒田亜紀。

コンサート会場には、音大の学生も沢山来ていた。音大の学生は、やはり 独特の雰囲気があるのでよく分かる。特に女の子のファッションは、ひと目で 「あ、これ、音大だ」とはっきりわかるから面白い。もっともひとくちに音大 と言っても、私大系、教育大系、国公立音大系では違うかもしれないが、そこ までは分からない。たぶんこの順に地味になっていくと思うが。

ちょっと色合いが単調かなと思うけど、オペラハウスをイメージしたこの ジャケットも悪くないし、"Clarinet Sings Opera"の文字の楽しげな感じも良 い。ただ、少し上から眺めたカルボナーレの姿のイラストはちょっと短足胴長 に見えて、それはそれで良いのだけど、何だかこれと同じようなものを、さき ほど親和会宴会で食べてきたような気がする。こういう小さい生き物の屍骸を 片栗粉か何かをまぶして油で揚げ、それを酢の物にしたようなやつを。。。 えー、私、今、酔っ払ってますから気にしないでください。はい、じゃあ、 おやすみなざいzzz

2009年7月27日(月)
<<貧乏神だぞお!>>
夜10時過ぎに、東京出張から無事帰宅。定宿の新宿ワシントンホテルの宿泊 者は中国人が大半を占め、近くの都庁のあたりも中国人観光客が多い。従来中 国人観光客はガイドの厳しい監視の下、団体旅行だけが認められていたが、最 近、一定の収入のある人に限って個人旅行が認められたようだ。そのためか、 観光客とおぼしき中国人の1、2人連れの姿がちらほら見られた(ように思う)。 まあ、私もよく中国人や韓国人に間違えられるから、 実は日本人だったかも知れないけどね。

京王線下高井戸駅から日大文理学部までの5分ほど細い道は、いかにも東 京の下町風の商店街だが、この数年でも色々変化があった。日大セミナーに通 い始めた最初の日に一度だけ昼食を取った蕎麦屋は、早々と店じまいして建て 替わり、ドコモショップになった。また、通りに面して古い小学校があったけ ど、それが数か月前に建て替わった。そうこうしているうちに、一度だけ夕食 を食べたことのある天ぷら屋が建て替わって、若者向けっぽい外食店ができた。 そして今日、半年振りぐらいに行ったら、一度だけ野菜ジュースを買ったセブ ンイレブンが、(改装のためかもしれないけど)店舗が無くなっていた。どう も私が一度入った店は潰れる傾向にあるようだ。

日大はあまり変わっていなかった。ただ、以前少し体調を崩して昼食を自 家製弁当で節制していたセミナー常連の某先生が、その後、若者向けの肉と揚 げ物中心のガッツリ学食に復帰してジャンボメンチカツなどを食べていたが、 今回行ってみたら、また野菜中心の自家製弁当に戻っていた。

セミナーの発表は、まあ、詰まらない話の割りには無事に終り、有益なコ メントもいくつか頂けたし、やっぱり話した甲斐があった。

さて、東京帰りの1枚は、鈴木雅明のチェンバロで「ゴールドベルク変奏曲」 (J.S.バッハ)。いくつか持っているCDの中で、もっとも軽快なゴールドベル ク。最初にゴールドベルクを聴いたのはこのCDで、これはこういう曲だろうと 思ってたら、後で色々他の演奏を聴いてみて、ずいぶん感じが違うのに驚いた。

それにしてもこのジャケットは、何だか黒魔術めいて気持ち悪い。 "Goldberg Variations"の文字の背景の黄緑色も、背景の黒と紫との間に見事 な不協和音を作ってますね。あと、こっち見てるオジサンは誰ですか?バッハ の若い頃の肖像でしょうかね。最初にこのCD が出た時は、トランプが32枚 (変奏曲の数)立てられて輪になっている、ちょっと洒落た写真だったのだけ ど、今のものはかなり見劣りがする。

2009年7月25日(土)
<<多忙を口実にする>>
明け方、とは言ってももう7時を過ぎていたと思うが、夢の中で色々数学を考 える。昨日の昼間に考えていて、もひとつしっくり来なかったところに思いを 巡らした末に、疲れ果てて10時過ぎに起床。昼間は自宅で大学の仕事。夕食 の頃までには何とか片付き、夜はスポーツクラブ。

高校OBのメーリングリストでは、今日もチャット状態が継続しており、韓 流ドラマと嵐のベストアルバムの話で盛り上がっていた。私、恋愛ドラマとか イケ面とか好きだけど、テレビ見てないから、よくわかんない。しかし、皆さん、 高山君はどうしたの?全然応答がないけど、みたいなことを書いているので、 しょうがなく深夜に短い返事を書く。「多忙を口実に沈黙を守り続けている高 山です。こんばんは。(後略)」

さて、多忙を口実に潜伏生活を送る今日の1枚は、イギリスのクラリネット奏 者シア・キングによる、Franz Wilhelm Tausch とFranz Xaver Süssmayr のクラリネット協奏曲集。Süssmayrはモーツアルトの遺作のレクイエムを 完成させたことで有名とか。どちらもモーツアルトとほぼ同世代で、曲の感じ もモーツアルトに似ていて明るく華やかで、英国室内楽オーケストラも結構い い感じ。しかし、シア・キングのクラリネットの、合成樹脂の表面みたいなテ カテカした感じの音は、どうも私の好みに合わないので、このCDは滅多に聴か ない。

このジャケットも、ずいぶんもっさりした絵である。ガラスの壷に落ち葉 と水を入れて1ヶ月程日向に置いておくと、適当に腐ってきて、水も濁り、そ れを陽にかざすとこんな風に琥珀色に見えるのだと思う。

今年から科研費が打ち切られ出張を控えていたのだが、最近某所から小金 が転がり込む目処が立ったので、明日から久しぶりに東京出張。次回更新は 月曜の深夜以降。

2009年7月24日(金)
<<リポビタンD>>
フランス語と数学の日。昼過ぎまで、フランス語基本動詞の活用形の復習。学 生の頃も、動詞の活用形には泣かされたし、こんなものは一生覚えられないだ ろうと思った。今でも覚えられない。お前、27年前のあの日、俺にこんな暴 言吐きよっただろう、みたいな事はいつまでも覚えているくせに、先週覚えた 動詞の活用はもう忘れている。毎日少しずつ繰り返せば良いのだろうけど、 いつも気がついたら金曜日になってるってわけ。

活用形の復習に区切りがついたところで自宅を出る。まずはドイツ語寺子 屋塾がやっている多国籍レストランで、かなり遅めの昼食。それから関西日仏 学館の図書室に籠り、数学を考えたりフランス語を勉強したり。夕方、京大ル ネで少し早めの夕食の後、フランス語の授業。謎の市役所職員氏は、日食を見る ために休みをとって南の島に行ってたそうだ。お土産の日食煎餅(という名前 ではなかったけど)を一枚頂いた。「日食饅頭とかいう、真っ黒な饅頭も売っ てました」と。私としては、煎餅よりも、そっちの方がよかったかな、と。

今日の演習で思いついた例文:
パートナー:"Vous rencontrez souvent de gens bizarres?" 変な人を見掛けることはありますか?
私:"Oui, j'en rencontre un dans la glace de tems en temps." ええ、時々鏡の中に一人、変な人を見掛けます。

帰りは熱帯夜の夜道を、いつものように地下鉄京都市役所駅前まで歩く。暑い ので、路上飲酒はなし。代わりにコンビニでリポビタンDを買って飲む。何で リポビタンDなのかって?特に意味はないよ。単に飲みたかっただけさ。

さて、今日の1枚は、Robert Revinという人のチェンバロで、J.S.バッハのチェ ンバロ協奏曲BWV1052番からBWV1054番。どれもテレビのBGMでもよく 使わているような有名な曲で、5月31日に紹介したジャック・ルシエのジャ ズのCD にも入っている。最初はチェンバロのちゃらちゃらした感じの音が嫌 いで、買っただけであまり聴かなかったけど、最近の私はチェンバロ慣れして きているので、こういうのもいいなあと思う。

このジャケット、色が綺麗だけど何だか散漫な感じ。ヨーロッパの街にあるよ うな広告塔に、「全国何処へでも花をお届けします、hänssler 花キュー ピット・チェーン」とか「創業1052年、信頼と実績のBach生命」とか「チェ ンバロ・コンサートのご案内、Robert Levinとシュトゥッツガルト・バッハコ レギウム、○×コンサートホールにて、某月某日18時30分開場、19時開 演」といった広告が無造作に貼ってあるみたい。

2009年7月23日(木)
<<トラウマ>>
一応研究日。午前中は大学の用事や来年度のドイツ逃亡計画に関するメールを 出したりしているうちに終り、昼過ぎにラクト山科へ。そこで野暮用を済ませ てから昼食。その後、地下鉄とバスを乗り継いで京大へ。数学教室図書室に籠 り、日大セミナー講演原稿をいじくり回す。いくらいじくり回しても結果が改 良される兆しが見えないままに閉館時間を迎える。まあ、元々大したアイディ アじゃないから、良い結果にはなりようがない、か。

帰りは山科経由でスーパーに立ち寄り、食材などの買い物をしてから帰宅。 夜は、大学の用事で少し長いメールを書いてから、TeX原稿を修正。先日昼食 会をした高校の同期生たちが作ったメーリングリストを覗いてみたら、既にほ とんどチャット状態になっていた。ごく最近に顔を会わせた少数の仲間だし、 利害関係の無い気の置けない間柄だから、尚更話が弾むのだろう。 私もそういうお喋りは大好きだけど、珍しくここんところ色々忙しくて、 楽しそうな彼らを横目に応答はパス。

例えば大学時代の友人同士だと、 同じ分野で凌ぎを削った間柄だったりするから、あいつは今某有名国立大理学部 のエリート数学者たけど、俺は冴えないチンピラ数学者もどきだとか、あいつは 裁判官になってバリバリやってるけど、俺は司法試験浪人崩れのフリーターさ、 とほほ、みたいな青白い情動が蠢いたりするけど、高校ぐらいだと進路や分野はてんでバラバラなので、そういう暗い側面 はいくぶん緩和される。こういう友達は大事にしていかなくっちゃ思う。

さて、何だか気ぜわしい今日の1枚は、ハインツ・ホリガーの「無伴奏オーボエのた めの12の幻想曲(原曲:フルートのための)」(テレマン)。当初は、退屈 なCDを買ってしまったものだと、少し後悔していた。やっぱりオーボエは種々 雑多な音が入り混じるオーケストラの中で、ひとり賢そうにして目だってるの が良い。ソロじゃあ引き立て役も居ないし、面白くないな、と。でも最近 は少し慣れたというか、最後まで聴いていられる。今日も最後まで聴いた。

このジャケット。7月18日の内田光子の時にも書いたけど、顔のどアッ プは危険だから、やめい!と言いたい。この写真、水中で突如現れた提灯鮟鱇 に握手を求められてびっくり仰天!みたいに見えちゃうのよね。昨日のザビー ネ・マイヤーの写真も、♪マグロが出てきてこんにちは、オジサン一緒に遊び ましょ♪みたいに見えることがあって、マグロの頭にトラウマのある私として は、結構辛いものがあるのよね。

2009年7月22日(水)
<<日食>>
一応研究日。しかし色々あって、午前中は烏丸御池の弁護士事務所へ。その後、 烏丸通りを北上して用事をすませる。路上の人々の様子がおかしいので、ふと 空を見上げたら、曇り空の間から3分の1ぐらい欠けた太陽が見えた。ああ、 これが日食か、と。

その後、何となく徒歩で北上して同志社大学生協に潜入。そこで昼食をとっ てからバスで百万遍に移動して京大へ。北部生協喫茶「ほくと」で食後のコー ヒーを飲み、午後の開館時間を待って数学教室図書室に籠り、夕方まで数学。 日大セミナーで話す原稿を見直していたら、間違いが色々見つかり修正に追わ れる。自明な事以外ほとんど何もわかっていない途中結果の話だけど、日大セ ミナーで話してみて何かヒントが得られれば儲けもの。

京大の帰りはJEUGIA三条本店を少し偵察。バスクラリネットのちょっと面 白そうなCDを見つけたけど、試聴ができなかったので、とりあえずパス。夜は いくつかメールのやりとりをしたり、昼間の修正結果をTeX化したり。

さて、今日の1枚は、ザビーネ・マイヤーのデビューCDで、モーツアルトの 「クラリネット五重奏曲」とキュフナーの「序奏、主題と変奏」。この頃の マイヤーさまのクラリネットの音は、今よりもカラッとしていて明るい。 今のちょっと「泣き」の入った透き通るような音も好きだけどね。

最初にこのジャケットの写真を見たとき、ケネディー大統領夫人になる前 のジャックリーン・オナシスかと思ったけど、全然違うな。こういうモノクロ 写真を見ると、左上の方の暗闇に何があるんだろう?って妙に気になる。鬼、 ガマ蛙、ヤンキー、お化け、じゃかじゃかジャンケンのコニーちゃん、ツマグ ロヨコバイ、鼻糞ほじくってる変なオジサン、逆襲するミトコンドリア星人。 何が居てもおかしくないと思うけど、そんなところでクラリネット持って暢気 な顔してていいのかい?と。

2009年7月21日(火)
<<後味悪し>>
前期の講義最終日。昼頃に出勤し、研究室こそこそ昼食の後、13時より14 時30分まで、経済学部・経営学部のC言語プログラミングの演習。元気な2 回生3人組は無事レポートを提出。4回生のひとりのレポート提出は、もうす こし遅れるかも。

引き続き、14時40分より16時10分まで、数理科学科2回生の代数 の講義。置換群のこまごまとした話や共役部分群の概念、そして4次置換群の 応用で4次方程式の話をさらっとしようと思い、割合余裕のある授業計画で臨 んだ積もりだけど、案外うまく行かず。大慌てで話しても、 結局4次方程式の 話に入れず。うーん、また早口で喋り、板書も猛スピードになってしまったけ ど、学生達はついてこれたのかしらと、ちょっと心配。

まあ、どのみち後期の授業の最初で前期の復習をするから、やり残した4 次方程式の話は、その時にやれば良いか、と。前期試験の範囲や出題形式、勉 強の仕方などについては、授業の最後にあらかじめ作っておいたプリントを配 布して周知徹底を図る。

その後、16時半から小一時間程、先日学科長から仰せつかった頭の痛い 宿題を片付ける。準備のために色々心を砕いた積もりだけど、嘘だか本当だか よくわからない話をさんざん聞かされたりして、あまり後味の良い仕事ではな かった。しかし、まあ、とりあえず私は自分の任務をきちんと果たしたのだし、 もうあとは知らない。

さて、後味の悪い今日の1枚は、ザビーネ・マイヤーの「オペラの夜」。モー ツァルト、ロッシーニ、ウェーバー、ヴェルディのオペラ曲の各種とりあわせ。 オーケストラがあまり好きではないので、普段はあまり聴かないけど、オペラ の曲って心の底からほのぼのと楽しくなってくるし、やっぱりいいもんですね。

このジャケットの写真も、オペラハウスの建物の中か、オペラの舞台装置 なんでしょうかね。ここから先は楽しい夢の世界、さあ、一緒に行きましょう よ!って誘われてるみたいな感じで、「よっしゃあああ!その話、乗った!」と。

それと、どうでも良いことだけど、マイヤー様が羽織っている白いショール みたいなのが、美味そうな求肥餅に見えてしまう私って、ヘンかしら?

2009年7月20日(月)
<<密談>>
昼頃出勤。研究室こそこそ昼食の後、明日の授業のレジュメのコピーをしたり、 出張申請書を書いたりといった雑用。14時半から16時前まで卒研ゼミA (可換環論・代数幾何学)。可換環論の方はHom関手の左完全性の証明を終えて 蛇の補題に入る。代数幾何学の方は就職活動のため、お休み。卒研ゼミ中の某 先生の所に行って、会談のアポを取ったりしてから、16時半から18時頃ま で卒研ゼミB(初等整数論)。今日で素数の逆数の和の問題の部分が終了。そ の後、18時半よりアポを取っておいた某先生の部屋で1時間ほど密談。

さて、密談の後の1枚は、オリヴィエ・メシアンの「世の終わりのための四重 奏曲」。Tashiというアンサンブルで、7月10日にも紹介したリチャード・ ストルツマンがクラリネットを吹いている。この曲はとても有名らしいけど、 何度聴いても、このシケた曲のどこが良いのかよくわからない。今日こそはこ の曲の良さを発見するぞとの意気込みで聴いてみたけど、やはり挫折。ああ、 この世の終わりだなあって気分にはなれたけどね。

このジャケットの絵も、一体何なんでしょうね。実写版「狼少年ケン」で すか?空に向かって吠えてる暇があれば、火がついてる自分の左足を何とかし てはいかが?それに、後ろの雲がケンを中心に左右対称にモクモク膨らんでる のも、ちょっと不自然。

あるいは、次のようなことなのかもしれない。ある朝、目が覚めたら 自分が芋虫、、、ではなくて、巨人になっていた。と言うよりは、世界が 急速に収縮し始めていて、何もかもがどんどん小さくなっている。山も 川も湖も、そして自分が着ていた服も下着も全て小さく小さくなって着られなく なっている。 ああ、この世が終わりに近づいている。 そして、何故か自分だけがこの動きに取り残されている。 これは大変だと外に飛び出したら、 既に雲や虹に頭が届くぐらいになっていて、慌てたはずみで左足で工場を ひとつ踏み潰してしまい、火事になってしまった。こうしてはいられないと、 私はとっさに叫んだ。「おーい!誰か、俺のパンツを持ってきてくれー!」と。

ま、いずれにせよ、この絵からは禄な想像は思い浮かばない。 でも、Tashiのロゴのデザインは面白いし、こういう のを手ぬぐいに染めてみると、ちょっとカッコいいかもしれない。

2009年7月19日(日)
<<借りてきた猫>>
今日は、私を含めて高校時代の同期生有志6人で南草津で昼食会。日曜日の近 江バスは本数が少なく、JRは人身事故だの何だので平気で2、30分遅れたり するので、安全係数を大きめに取ってかなり早めに自宅を出る。結局、JRは遅 れず、南草津の駅で少しぶらぶらして時間を潰す。1次会は某和食料理店で3 時間ほど、2次会は近くの喫茶店で1時間ちょっと。散会して、私は車の人に 瀬田駅まで送ってもらう。

今日の6人は、元ヤンキーの男一人を除き、あとは皆、女。私には理想的 な割合で、こういうところで借りてきた猫のような顔をして、女たちの話に聞 き入り、頃合をみて適当に口を挟むというスタンスが、一番気分的に楽である。

そういえばこの人達とは、今まで一度も話したことなかったなあ。ヤンキー は恐くて近寄れなかったし、私は暗い人格の頭のおかしい高校生だったから、 中学で一緒で高1の時にも一緒だった一人を除いて、女の子とは誰とも話した ことはなかったし。32年後のヤンキーは気さくな堅気のオッサンに成り下が り、女の子たちはもはや「女の子」ではなくなっていた。まあ、適当に灰汁が 抜けた今の彼らの方が、お話しするにはちょうど良いのかも。

私と同じ1958年生まれの人は、その前後と比べてかなり少ない。その ため、大学を出てしばらく経って同期の仲間が次第に散り散りになっていって からは、私の近くに同年輩の人が居たためしがない。常に自分よりもかなり若 い人か、かなり年上の人ばかりに囲まれている。そういうことに慣れっこになっ ている積もりだが、会社員時代や高校時代の同期会の類に熱心に参加してみた り、ザビーネ・マイヤーさまが(ほぼ)同年輩と知るや、 ぐっと親近感を覚えたりと、 無意識のうちに同年輩の気兼ねのなさを求めているようなところがあるよう だ。

夜は少し数学。月末の東京でのセミナーの発表準備など。

さて、借りてきた猫の仮面を外した今日の1枚は、室内楽曲団コンソーシアム・ クラシカムとディーター・クレッカーのハンス・フィッツナー四重奏・六重奏 曲。明治から昭和のはじめ頃の人らしいけど、ハンス・フィッツナーって誰よ? 私は知らないけど、ディータ・クレッカーの泣きの入ったクラリネットの音と あいまって、じんと来るものがあります。

しかし、このジャケットは問題であります。何でオジサンにガン飛ばされ なきゃならないんですか?私が何をしたというのですか? この人はヤンキーですか?オジサンの背景の 紫や黄色の太い線も、おざなりなくせに何だか不気味。

こういうのが掛け軸になって床の間に飾ってあったりすると、結構怖いも のである。子供の頃あてがわれた勉強部屋は、床の間に達磨の墨絵の掛け軸が かかっている部屋の廊下の隅。この掛け軸の達磨が、ちょうどこのオジサンの ように常にガンを飛ばしていて、私は恐くてしょうがなかった。それで少なく とも小学校の高学年になるまでは、その勉強部屋には近寄らなかった。

公立中学で不良番長グループ(まだヤンキーという用語は定着していなか った)が跳梁跋扈していると聞き、これはまずい、私などは真っ先に絡まれ そうだと危機感を抱いて私立中学受験を決意してからは、達磨の掛け軸を外 してもらって、その勉強部屋で受験勉強を始めたのだった。思うに 子供の頃の私は、多くのエネルギーを「ヤンキーのいない世界に逃れること」に 費やしていたようだ。

2009年7月18日(土)
<<リアルに感じる>>
午前中は火曜日の代数学の講義最終回の準備を少し。午後は京都市内某所で開 かれた、仲間うちの小さな定例コンサートを聴きにいく。今日はチェンバロ。 J.S.バッハやヘンデル、スカルラッティー、ヴィヴァルディーのチェンバロ曲 やフルート、ヴァイオリンとのアンサンブルなどをたっぷり楽しめた。チェン バロが、いくつかのストップを押したり弾いたり、あるいは、上段の鍵盤をず らして上下段同時に音が鳴るようにしたりして、色々な音色になることを、今 日初めて知った。あれは面白い楽器である。

コンサートの後は、河原町三条界隈に寄り道して、JEUGIA三条本店を偵察 したり、久しぶりにAnger河原町三条本店をぶらついたり。Angerで30代とお ぼしき女性店員とその友人男女が立ち話をしていた。その女性店員はもうすぐ 店長に昇進するそうで、友人たちは「おーっ凄い!『(キャリアを)上り詰め てる』って感じやん!」と興奮し、彼女は「そんな積もり無かったのだけど、 頼まれたから断れなくて」と照れていた。

夜は久しぶりにスポーツクラブ。今日は「強い爺さん」も来ていた。

さて、今日の1枚は、(私は山科とロンドンを行ったりきたりして生活してい ると信じている)内田光子のシューベルトのピアノ・ソナタ第19番ハ短調D.958と ピアノ・ソナタ第20番イ長調D.959。特にD.958は、他の演奏家たちとの 解釈と一線を画する、胸にずしりと 来るシューベルトである。

このジャケット、4月30日に紹介した即興曲集の「生首ジャケット」と 同様の構図だけど、こちらの方がうんとマシである。しかし今はCDの時代だか ら、せいぜい10数cm四方の写真で済むけど、昔のLPレコードの時代だった ら30数cm四方だ。この画面一杯顔だらけ写真を30数cm四方でやられた ら、ちょっとキツイものがあると思う。多くの人は内田光子の音楽を聴きたい のであって、内田光子の顔をリアルに感じたいわけではないし。

とは言うものの、私は一度この人の話し声を聞いてみたいと思う。山科在 住主婦モードでゲーテでドイツ語を話している時の声は知っているが、ピアニ スト・モードの時の声は聞いたことがない。彼女のどのCDのジャケットにも顔 写真が出ていて、いずれも独特の表情をしているのだが、いつの間にか私は、 この人の話し声はこんなのだろうと、かなりリアルに想像してしまっている。 それを確かめてみたいのだ。想像とは全然違ってたりしたら、それはそれで面 白いだろうし。

2009年7月17日(金)
<<未解決問題>>
私としては結構早起きして、10時過ぎに京大へ。代数幾何学の定例セミナー を聞きに行く。京大は代数幾何学の世界的研究センターのひとつなので、研究 者レベルの講演会も多くて便利なのだが、特に定例セミナーのような常連メン バー中心のところは、私にとっては何となく敷居が高い。今日のセミナーも透 明人間モードで気配を殺して参加。やはり「過去の生い立ちの悪さや悪行、そ してさまざまなトラウマ」が気後れの原因。

その後、北部生協喫茶で昼食とフランス語動詞活用形の復習の後、数学教 室図書室に移動し、閉館時間まで籠る。夕方は関西日仏学館の図書室へ。ここ でまたすこしフランス語の復習をしてから、京大ルネで夕食。夕食後、ちょっ と書籍部を見ていこうと思って入ったら、「この顔のピンと来たら110番」。 5年前にゲーテの中級クラスで一緒で、2年前の大阪ゲーテのクリスマスパー ティ潜入時にも再会して、ちょっと挨拶した人だ。お久しぶり、とちょっと挨 拶。奈良の大学を卒業し、今は京大の大学院に来ているそうだ。それからフラ ンス語の授業。帰りは京都市役所前駅まで徒歩。

夜、昨年度の卒研生からメールが届いた。某大学大学院に進学して、元気 にやっているとのこと。「修士論文、期待してます」と返事を返しておく。彼の 現在の指導教官Kは私の学生時代の同学年。私はKのことを知っているが、Kは 私のことを知らない。

私にはそういう一方通行の知人が多い。最近はそうでもなくなってきたが、 以前はいつもキョロキョロあたりを見渡して、どこにどんな人が居るか 偵察調査に余念が無かったため、話したことはないけど知ってる人は沢山いる。

互いに相手を知ってる間柄も少なくないけど、特に現在の数学者稼業に 関係する学生時代からの知人の場合は、犬猿の仲か、一方的に嫌われているか、 一方的に馬鹿にされているかのいずれかの場合が多いような気がする。あるいは、 相手はそれほど悪く思っていないかもしれないが、私の方が、数学があまり良く 出来なかったという引け目から、勝手にそう思い込んでいる場合もあろうかと思う。

それを思うと、我ながら「過去の生い立ちの悪さや悪行、そしてさまざまな トラウマ」の深さに思わず息を呑む。

かように業の深い私の今日の1枚は、4人編成クラリネット・アンサンブルの ウイーン・クラリネット・コネクションのcafé europa. クラシック、 ジャズ、その他色々なジャンルの曲をクラリネット用にアレンジした刺激的な ライヴの録音。

このジャケットの写真、なかなか渋くてカッコいいですねえ。私の子供の 頃、「鉄道公安員」という、父親と一緒によく見ていたテレビドラマがあって、 こんなシーンをよく目にしたような気がする。

子供だったからドラマの内容はほとんど理解できなかったが、一つだけ不 思議に思ったことには、このドラマの中で悪いことをする人は必ず黒いサング ラスを掛けており、また、それを追う鉄道公安員は、いざ容疑者を発見して 尾行するときには、「よし、奴を追うぞ!」と声を掛け合って、必ずサン グラスを掛けるのだった。これはこのドラマに限らず、当時の刑事物ドラマで はよく見られたシーンだったように思う。

その理由を父にたずねると、「悪い奴もそれを追う者も、顔を見られて自 分の正体を知られたくないからサングラスをするのだ」と言ってたが、それも 腑に落ちない。当時はまだサングラスをしているのは「ヤンキー」(日本人不 良少年のことではない)かチンピラヤクザと相場が決まっており、かなり目立っ てしまう。サングラスをして、ちょっと肩でも怒らせて街を歩けば、「えらい もんが、来よった!」と皆がよけて通ったものである。だから、容疑者に知ら れないよう、鉄道の利用客に紛れて尾行追跡する公安員がサングラスなどした ら、余計目立って容疑者に警戒されてしまうではないか、と。この謎は未解決 のままである。

2009年7月16日(木)
<<祇園祭>>
午前中は自宅で少し数学。高島屋から日傘の修理が出来たとの連絡があったの で、その他の買い物も兼ねて四条界隈へ。学生時代とあわせて京都に23年住 んでいるけど、祇園祭は、何年か前に山鉾を組み立てている現場をちょっと見 学した以外は、まともに見たことがない。ちょうど烏丸四条の大丸にも用事があっ たので、そこの山鉾を通りすがりに見学した。

その後、京都駅に移動し、アバンティーのサンリオショップを偵察してか ら、ホテル京阪のロビーでしばし数学。フロントで、祇園祭の宵山に行く方法 を聞いている宿泊客が居た。京都のホテルも書き入れ時なのだろう。

それからブックセンターにすこし立ち寄ってから帰宅。夜は来週最終回の 講義の準備の他には、東京の月例セミナーの講演申し込みメールを送ったり、 「頭の痛い宿題」関連であちこち連絡を取り合ったり。

さて、宵山の1枚は、ディミトリ・アシュケナージとウラディーミル・アシュ ケナージ父子による2007年の録音「クラリティー」。シューマン「3つの ロマンス・作品94」、ベルク「4つの小品・作品5」、ルトスワフスキ「ダ ンス・プレリュード」、サン=サーンズ「クラリネットソナタ変ホ長調・作品 167」、プーランク「クラリネット・ソナタ」、ジェルベ「子守唄」。ディ ミトリのクラリネットの音色は、凄く綺麗というわけでもないが、そう悪くも ない。要するに、びみょーである。

それにしても変なジャケットである。コンサートの真っ最中に停電が起こっ て照明が消えてしまったが、彼らは演奏を続けた。観客たちも動揺することな く、ある者は瞼に浮かぶ残像を見、またある者は鞄からやや性能の悪い暗視カ メラを取り出して舞台の父子を見続けるのである。それにしても、そこの君、 何でコンサートに暗視カメラなんか持って来てるんだい?と。 7月12日紹介したCDもそうだけど、CRYSTONレーベルは暗視カメラものが 好きなのか?